DAX96-02_令和3年版科学技術・イノベーション白書【概要】
扉絵
イラスト
扉絵(Society 5.0)について
- <Society 5.0とは>
- Society 5.0は、我が国が目指すべき未来社会として、第5期科学技術基本計画(平成28年1月閣議決定)において提唱されたコンセプトです。狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く社会であり「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」と定義しています。
- 「仮想空間と現実空間の融合」とは、最新の情報通信技術(ICT)を活用して現実空間の多種多様なデータを、スーパーコンピュータ等における仮想空間に集積し、この仮想空間内で、社会の様々な要素について、人工知能(AI)も活用して、シミュレーションなどの高度な解析、予測・判断を行い、その結果を現実空間に反映することです。この仮想空間と現実空間との循環によって、私たちの社会を、より良い「人間中心の社会」に変革していくことを目指します。
- <Society 5.0として我が国が目指す未来社会像>
- 新型コロナウイルス感染症、東日本大震災といった大規模自然災害、地球温暖化等の脅威に対し、国民の安全と安心を確保することは喫緊の課題です。また、近年、人々の価値観も、富の追求に限定しない多様な幸せ、更に国や世界への貢献を重視するなど変わりつつあります。人生100年時代に、生涯にわたって社会参加し続けられる環境も求められます。
- では、Society 5.0として我が国が目指す未来社会像をより具体的に「直面する脅威や先の見えない不確実な状況に対し、持続可能性と強靱性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」と表現しました。
- この未来社会を分かり易くイメージしたのが、前ページの扉絵です。最先端の科学技術を用いた「仮想空間と現実空間の融合」という手段と、「人間中心の社会」という価値観によって、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」と「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」の実現を目指します。
- <Society 5.0実現に必要となる取組>
- Society 5.0実現のため、「仮想空間と現実空間の融合」を可能とする基盤技術や社会実装へのチャレンジとともに、地球の持続可能性や社会の強靱性を確保する研究開発が必要です。
- また、Society 5.0として、新たな社会や価値を創造していくとともに、少子高齢化や過疎化といった複雑な社会課題に対峙していくためには、自然科学の「知」と人文・社会科学の「知」が融合した「総合知」の活用が必要となります。
概要
科学技術・イノベーション白書について
- 概要イメージ図
- 本年4月施行の科学技術・イノベーション基本法に基づき、政府が科学技術・イノベーション創出の振興に関して講じた施策を報告するもの
- 年ごとの話題を特集する第1部、年次報告である第2部(例年どおりの構成)の二部構成
- l特集部分である第1部は、第6期科学技術・イノベーション基本計画が目指す社会(Society 5.0)を、イラストも活用しつつ、国民向けに分かり易く紹介
- イラスト・写真やQRコードを活用し、大人から子どもまで、親しみやすい白書に
第1部の構成Society 5.0の実現に向けて
- Society 5.0の実現に必要となる取組
- Society 5.0:「仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題解決を両立する人間中心の社会」
- 我が国が目指す未来社会像:「直面する脅威や先の見えない不確実な状況に対し、持続可能性と強靱性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」
- 「仮想空間と現実空間の融合」を可能にする研究開発(スパコン、AI等)
- 「国民の安全と安心を確保」のため、脱炭素化、防災・減災、新型コロナ対応に向けた研究開発
- 「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)」のため、上記とともに、自然科学の「知」と人文・社会科学の「知」が融合した総合的な「知」(「総合知」)の活用
- 「知」を生み出す基礎研究力の強化
- スパコン「富岳」理研
第1章 社会のデジタル化、脱炭素化等に向けた最先端の取組
- (1)仮想空間を構築するための基盤技術
- (2)仮想空間と現実空間を結ぶ技術
- (3)脱炭素化などの安全・安心の確保に向けた取組
第2章 社会課題解決に向けた総合的な「知」の創出と活用
- (1)人文・社会科学の「知」と自然科学の「知」の融合
- (2)知の融合による社会課題解決の取組事例
第3章 Society 5.0実現の基盤となる基礎研究力の強化
- (1)我が国の研究力
- 今世紀に入り、自然科学系のノーベル賞受賞者は第2位
- 一方、注目度の高い論文数について、国際的な地位の低下:
- 第4位(20年前) ⇒ 第9位(現在)
- (2)研究力強化に向けた新たな取組
- 経済的な不安等から優秀な若者が博士後期課程への進学を断念する現状を早急に改善する必要
- 若手研究者が自らの知的好奇心に基づき、腰を据えて野心的な研究に取り組むことができる環境の整備も必要
- ①10兆円規模の大学ファンドの創設
- ②博士後期課程学生の処遇向上(約15,000人の支援)
- ③若手研究者の挑戦を支援する取組(創発的研究支援事業)
第4章 新型コロナウイルス感染症への対応
- ①感染症と人類の歴史とそこから学ぶ教訓
- ②政府の新型コロナウイルス感染症への対応
- 治療法、ワクチン、医療機器開発といった研究開発の推進
- ③研究現場への影響と新たな研究スタイルの構築に向けた取組
- 研究活動のリモート化、ロボット導入による実験の自動化等
- ④新型コロナウイルス感染症の正しい理解を広める取組
- 科学的、客観的な情報を受け取る立場に立った表現で
- ⑤新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた科学技術の発展の展望
- 追加の予測調査では、自由度の高い就業形態を可能とする技術等の実現が前倒しに
備考
- この他、各章のコラムで「GIGAスクール構想の実現」(第1章)、「古典籍の分析がもたらす宇宙物理学の新発見」(第2章)、「ナイスステップな研究者2020」(第3章)等のトピックスを紹介